「なぜ」という疑問にしっかりとした解答を出すことが説得力を生む
遠藤 真彦
Masahiko Endo
<カクテル アワード 2008受賞>
1997年より福岡にてバーテンダーの仕事を始める。2004年にシンガポールでのジョンホワイトコース、現エリートバーテンダーコースに参加。2014年11月より香港でジャパニーズスタイルバーMIZUNARA : THE LIBRARYの企画、開店にジェネラルマネジャー、パートナーとして参加、2015年2月にグランドオープンする。2017年TEDx HONG KONGのスピーカーに選ばれ、講演。様々なカクテルやウイスキーのセミナーを行う。2018年より系列酒販店MIZUNARA THE SHOPを開店、商品企画、輸出入のアドバイザーを兼務、現在に至る。
Q1.
あなたが他のバーテンダーと違うと思う点は何ですか?それはカクテル アワード受賞にどう関係していますか?
思考面では過去を精査し、物事をできるだけ理論的に説明できるようなアプローチをすること、学生時代の海外留学で得た日本に対する客観的な視点などがカクテル創作における説得力になり、さらに世界的なトレンドとの乖離を整合したことが受賞に繋がったのかもしれません。
日本のバーテンダーの多くがそうだと思いますが、細かい理論に基づいた研究、実験を行い、それらをもとにした技術を重視しています。「なぜ」という疑問にしっかりとした解答を出せるようにすることが、カクテル調合の動作や材料の組み合わせなどでも説得力を生み、受賞にも繋がったと思います。
過程が正確に行われていなければ良い結果が得られないことを常に意識し、実践している
Q2.
ジャパニーズバーテンディングを追求する上で大切にしていることは何ですか?それを未来に伝えていくために重要なことは何ですか?
ジャパニーズバーテンディングで特徴的なことの一つは、理論づけられた技術だと思います。最近、海外では一部のバーテンダーが科学的な視点から技術にアプローチしていますが、実験も結論も大まかな傾向にあります。
もう一つ特徴的なのは、様式美、或いは型や作法(しかも理論的にも説明がつく)だと思います。結果(商品)を提供するまでの過程も重要視しており、逆に過程が正確に行われていなければ良い結果が得られないことを常に意識し、実践しているのが日本の特徴だと思います。
そして、この世界でも稀な理論に基づく技術、研究、実践を行っているジャパニーズバーテンディングを齟齬なく明確に説明、伝達していくことが重要だと思います。
土地の文化に関係なく美味しいと感じられる味わいを持ち合わせていること
Q3.
時代を超えて飲み継がれるカクテルの要件は何ですか?カクテルコンペティションは今後どうあるべきですか?
まずは普及性、普遍性の高い材料で、記憶、発音しやすい名前、奇抜ではないオリジナリティで、土地の文化に関係なく美味しいと感じられる味わいを持ち合わせていることです。この中で、どれだけ完成度、話題性、再現性、見た目の魅力を高められるのか、そこに創作者の人間性、知名度などがあって飲み継がれていくかどうかが決まると思います。
コンペティションも今までのようなステージでの5分間ほどのカクテル製作だけではなく、よりその人のバーテンダーとしての資質にフォーカスする形式も組み合わせた方が良いと思います。筆記の事前審査やロールプレイでのゲストへの対応、即興での創作なども取り入れ、創作者とその作品の価値を高めることで認知度も上がる可能性が高くなるのではないでしょうか。
-
PREVIOUS ARTICLE17
師匠や諸先輩方から背中で教えられ、稀有な環境の中に身を置けたことが糧
Shuichi Nagatomo
-
NEXT ARTICLE02
カクテルを完成させる為の「仕込み」(レシピ構築・試技研究)にどれだけ時間を割けるか
Kiyofumi Kageyama