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得意分野を見つければ、
それが強みに

DAISUKE SATO

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佐藤 大介

DAISUKE SATO

2007年、ホテルメトロポリタンに入社し、オールデイダイニング「クロスダイン」に配属。レストランウエイターとして勤務後、ダイニング&バー「オーヴェスト」に異動する。2014年、HBAシニアバーテンダー資格取得後に現職のバー「オリエントエクスプレス」へ。同年、「サントリー ザ・カクテルアワード」入選。「第4回 HBA/KOKUBU共催 カクテルコンペティション」優勝など、数多くの大会で受賞経験がある。

日本のバーでひとつの
武器になり得る焼酎カクテル

―3月の「FOODEX JAPAN 2021」で、焼酎のカクテルを振舞われていましたね。その前月に開催された「第3回本格焼酎&泡盛カクテルコンペティション」の優勝作品でした。佐藤さんといえば、焼酎カクテルのイメージがあります。

もともとは熟成したラムやスコッチが好きで洋酒ばかり飲んでいましたが、大会に出ることを決めてから焼酎を飲むようになりました。はじめにクセのない米焼酎をベースに創作したところ、「味はまとまっているけれど、ベースの良さが消えている」と言われて悩みましたね。クセがないと、副材料に染められてしまいがちですから。焼酎らしさを残しながらバランスが取れた一杯に仕上げるにはどうすればいいのか、本を読んだりイベントに参加して勉強しました。いまはバックバーに焼酎が何本も置いてありますし、カウンターのお客さま全員が焼酎を召し上がっていることもあります。何かしら得意分野があるのは、強みになりますね。アルコール度数の高い原酒をベースにするバーテンダーが多いですが、僕は25度の焼酎にも魅力を感じています。その度数だからこそ出せる香りや味わいがありますし、ローアルコールカクテルも作れますよね。焼酎は1回蒸留で素材の風味が残りやすく、多彩なフレーバーが魅力。カクテルベースとしての可能性を感じます。


―これまで焼酎は“生(き)”で飲むものとして、カクテルベースにはなりづらかったように感じます。海外はもとより日本でもバックバーに置かれることは稀で、スタンダードカクテルもほぼない状況ですよね。

だからこそ、ポテンシャルが高いのではないでしょうか。シンプルで作りやすいレモンサワーなどから広めて、ゆくゆくは焼酎のスタンダードカクテルが生まれるといいですよね。例えば芋焼酎は甘いもの全般に合いますし、米はフレーバーを乗せやすいので出汁などの旨味や野菜との相性がいい。麦は、口にしたときの爆発するような感じがバーボンを連想させます。「アレキサンダー」のようなチョコレートやクリーム系のカクテルベースに、麦焼酎を使っても面白いですね。泡盛はアルコール度数が高く、独特な風味があるのでアレンジしやすいです。日本の地酒を海外にも普及させるには、まず国内で取り扱うバーを増やしてお客さまに知って頂かないと始まりません。日本のバーにビーフィータージンが置いてあるのは、改めて凄いことだと思うんです。それが日本人によってどう扱われるかと同じように、焼酎が海外のバーテンダーの手にかかるとどうなるかにも興味があります。焼酎をベースにしたカクテルは、日本のバーにおいてひとつの武器になり得ます。


―カクテルを創作されるときは、ベースを決めてから組み合わせを考えるのでしょうか。

常にベースは探していて、かなり前から決めていることもあります。カクテルを通してベースのお酒に興味が沸き、単体でも飲んでみたいと思って頂けるようにご案内するのもバーテンダーの仕事。順番としては、コンセプトからストーリー、ネーミング、それから色、味わいと考えます。味わいから組み立てて美味しいカクテルができるのは良いのですが、後からコンセプトやストーリーを考えて整合させるのは難しい。大会のテーマ、主催者の狙いなどを理解した上で、造り手の思いまで一杯に込められたらという気持ちで創作しています。

お客さまが求める
バーテンディングを考える

―お店のメニューに先ほどの大会で優勝されたカクテルが載っていますね。写真付きで1ページ分大きく扱っていますし、お勧めのカクテルだということがひと目でわかります。

こちらからもお勧めしていますし、有難いことに多くのお客さまからご注文を頂いております。以前、あるコンペティションで当店のバーテンダーによる作品が最優秀カクテルに選ばれて、11店舗のメトロポリタンホテルズやほかのホテルバー、レストランでも2カ月間オンメニューされました。優勝した作品は、可能な限り多くの店舗でもオンメニューして広めていくことが大事なのではないでしょうか。1995年のカクテルアワード最優秀賞作品「コットン・フラワー」や1999年の「スプリング・オペラ」(※)はお客さまにご注文頂いてお作りしたことがありますが、それはお客さまがご存知だったからこそ。そして材料が手元にあったからです。僕もカクテルアワードに出場した経験から、使用できるスピリッツやリキュールのバリエーションの豊富さ、入手困難な材料は使用できないなどの条件においても、とても良い大会だと感じています。


「コットン・フラワー」ホテルニューオータニ「Bar Capri」小森谷弘さんの作品。 「スプリング・オペラ」銀座「TENDER」(当時)三谷裕さんの作品。



―自家製のインフュージョンスピリッツなどがさまざまな大会で自由に使用されている中、カクテルアワードは伝統的でクラシックな大会なのかもしれません。

どのようなバーテンディングがお客さまに求められているかだと思います。例えばカクテルを作るスピードを競う種目は技術を磨くには良い機会になりますし、そのお店で必要とされていることなら進んで出場するべきでしょう。ただ、海外と比べて箱が小さい日本のバーではスピードよりも丁寧さや美しさが求められる傾向にあるのではないでしょうか。海外のバーテンダーが両手にシェーカーを持って振るダイナミックな動きは箱が大きいからこその動作で、日本のバーでそれが受け入れられるかどうかはわかりません。いま海外のバーでは日本人がオーナーバーテンダーやヘッドバーテンダーとしてカウンターに立つところも増えてきていますし、技術や使用する道具などの情報交換もしやすくなっています。文化は違えど、大会やゲストバーテンディングなどを通してお互い切磋琢磨しながらバー業界を盛り上げていけたらいいですね。


―世界的にさまざまな状況が変化していく中で、大会も変わっていくのでしょうね。

先ほどお話した焼酎カクテルの大会は、オンラインで開催されました。暫く会っていない友人や地方に住んでいる方など、これまで大会を見る機会がなかった方たちにご覧になって頂けたと思います。オンラインならちょっと興味があるという方も気軽に見ることができますし、一般の方が投票する仕組みもできますよね。予選だけオンラインにすることも可能です。多くの方にバーやバーテンダー、カクテルを知って頂く機会がもっと増えるよう、僕たちも思索していきたいです。

<佐藤さんの一杯>
ブランデー、ドライベルモット、グレナデンシロップ、オレンジジュース、クレーム・ド・ミントをシェイクした上に、ポートワインを少量フロートして2層に仕上げたカクテル「アメリカン・ビューティ」。クレーム・ド・ミントの1dashの効かせ方、2層にした点がよく考えられたカクテルだと佐藤さん。先述の「スプリング・オペラ」も同じく2層のショートカクテルだ。

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